作品像
作品のキーワードになっているのは「白」だそうです。
管弦楽に比べ吹奏楽はよく”モノトーン”だと言われることがしばしばあります。しかし、楽器の種類から言えば吹奏楽の方が多いんですね。その方が”カラフル”なはずなのに”モノトーン”とはどういう事でしょうか?
作曲者曰く「様々な”色”が完全に混ざり合うと最終的に行き着くのは”白”なんです」(たしかにそうですね)
楽曲では、混ざり合った”白”(=モノトーン)が徐々に分離し光り輝く様を音楽で如何に表現させられるかをイメージしたそうです。”光”(=色)はあちこちで一見不規則に光り登場します。(その辺をかなり緻密に書かれているかは総譜を見るとすぐ解ります)

また一方で作曲者は作品の中に激しい情念のような感情を込めてもいます。
以前お会いした折りに伺ったお話でこういうコメントがありました。それは・・・
「どうにも耐え難い怒り、耐え難い哀しみ。それを曲の中に込めたくなるところが自分にはあるんですよ」
この一言はその後の僕の頭から離れず、どんな曲が来るのやらと思い描くときに必ずこの一言がキーワードとなって残っていました。
ところで私達は怒りや哀しみの感情を何かのきっかけで外に出すことが多いと思いますが、一方ではその辺をグッと耐えることもあります。しかしよく考えてみるとこの耐えている感情こそ激しい物があることに気が付きませんか?
人間の感情は外に出してこそ発散されます。しかし”内”で耐えている感情は発散されることなく熱を増していくものです。このような感情はドロドロと渦を巻き増大いく大変なエネルギーがありますね。
「遮光の反映」ではそんな強い感情が”外”ではなく”内”に向かって際限なく膨らんでいく様が垣間見られます。

ところで才能ある中橋さんに対し、私も団員達もコテコテのアマチュアです。曲をどこまで理解できるかは保証しかねます。少々申し訳なく考えることも無くはありません。しかし作曲者はそんな事に拘ってはいないようでした。
それよりも演奏する私達がどれだけ曲に全身全霊をもって演奏に望むのかを楽しみにされているようです。
そもそも僕は伊達や酔狂で現代音楽を演奏したいなどと思ってはいなかったのです。僕達は極めて真剣な態度で曲に立ち向かうだけです。それこそが作曲者への最大の報酬と僕は信じています。そしてそれこそが僕が中橋さんに当初から固く約束していた事なのです。

曲の細かい分析はこれから始め、練習の中で団員の皆さん達と一緒に試行錯誤しようと思います。これに関しては参考演奏などと言う物は無いのです。自分達で切り開くしかないのです。作曲者が試行錯誤してこさえた分、今度は僕たちが試行錯誤する出番。これからが本当の意味での「具体的なスタート」です!