具体的なスタート
2000年に入りお話はいよいよ具体的な歩調をとりはじめ加速していきます。
この頃からのMAILではやたらと編成についての打ち合わせを行っています。何を使い、何を控えるか等々。。
楽器のタイプや打楽器奏者の数等も細かく打ち合わせ始めています。この時になぜに?と思えるほど詳細に確認してこられるのかはずっと後になって総譜を見たときによく解ることになります。

ところでこの時私達にとって大切な注文を付けています。特殊楽器の使用と特殊奏法に関する現場(しかもアマチュア)の立場での要望(戒めだったかも・・)でした。私達は時折作曲が何気なく(失礼!)書き入れた特殊楽器の調達でえらく苦労させられることがあります。一方、現代音楽でよくお目に掛かる微分音程(1/4音程)などは普通のアマチュア楽団では到底無理な相談です。
中橋さんのような作曲家が今後の吹奏楽界には必要だと思っていたので、そんな中橋作品がアマチュアの現場と距離を隔てすぎるのは良くないと感じ、彼に意見を伝えました。

それは特殊なアイテムを使って特殊なことを考えすぎるのは賛同できないと言うことです。
ある種の作品の中では通常お目にかからない楽器で特殊な音色を作ろうとするケースがしばしば見受けられます。
しかし、有名な故武満徹氏の作品はどうでしょう?基本的にはビックリ物の妙な楽器が登場することは以外と希です。しかしあの多彩な色彩感は武満さんならではのカラーであることは万人が認める点です。
僕はあまり安直に特殊楽器に頼るべきではないことを伝えたかったのです。将来にわたって中橋作品が万人のBANDで演奏される様な状況を夢見てもいるのです。だからこそ解って欲しかった。
しかし、そんな心配は彼には無用のようでした。十分その辺も理解の上で構想を練っていたのです。後からそのことはよく解りました。大した若者です。
【作曲者曰く】
たしかにご指摘の通り、日本(世界)に数多くある吹奏楽団すべてに演奏可能な編成であることは、今回の作曲意図を達成するには外せない項目です。 「どこまでが普通の楽器で、どこからが特殊な楽器なのか」というのが難しいと思います。私のようにオケを中心に活動している人間にとって普通に使われる楽器(スティールドラムとか)が吹奏楽では非日常的な楽器だったりするわけですから。 コントラバスの弓にしても、「吹奏楽にはコントラバスが標準で入っているから」とか思ってしまうわけですね。
 是非、今回の編成を決めるにあたって、多くの助言を頂きたく思います。私としても、あまり楽器をむやみに増やすのは好きではありません。通常の楽器を、通常の奏法(+?)で、ただ使い方の視点を変えてみる、というようなやりかたを試みたいと思っています。

また続けて・・・
「どんな前提で私が書きたいのか」という私側の意図をお伝えしていませんでした。 ご一読下さい。
1、職業演奏家ではない人々でも可能な演奏技法、および楽器を傷つけない奏法のみによって、
  これまで吹奏楽に見られなかったような音響を得る。
2、吹奏楽独自の編成を生かした構成をとる。即ち、例えば多数のクラリネット奏者がいるにも関わらず
  3パートに割り振る、というような、いわば「オーケストラ三管編成」の呪縛を脱却する。

しかし、何かと諸々の作曲に追われ9月まで構想の進展はストップされていたようでした。
そもそも異なる曲を複数同時進行していること自体が僕から見れば神業の様に思えるのですが・・・

さて、曲の構想が具体性を帯びるにつれ、打楽器の打ち合わせが待っていました。これが一番肝心な所。