熟成時間
当初1999年内から翌年前半にかけて出来上がるかもしれないと伺っていたお話は、中橋さんの多忙も手伝いのびのびとなりました。こちらから「まだですか?」なんて言える立場でもなく、とにかく本人さんが曲をじっくり練り上げる時間を損ねることだけはよそうと心に決めじっと待つことにしました。

後から考えるとこの期間の間で作曲者の頭の中で徐々に作品の”芽”が出始め、そしてそれを大切に育んでいたように思えます。
”作曲”という行為は何も無い状態から楽曲を作り上げていくという、僕にとってみれば”並”ではない行為です。
女性が胎児をお腹の中で芽吹かせ大切に育て、来るべき時にこの世に産み落とす様なものだと思います。
恐らく作曲者はこのこの約1年近い間の期間で、形になる以前の様々な構想を具体化させるべく試行錯誤をされていたのでしょう。(事実その後のやりとりからそれは容易に判断できます)

明けて2000年の正月明けのMAILで遂に具体的な話題になってきました。
・編成にピアノの使用がかかせないこと  ・曲のタイトルは仮名「遮光の反映」

その直後のMAILでは具体的な全体の編成の話や、使用したいと考えている話題に及んでいました。
その中で使用や調達の困難な楽器はその旨伝えながらより現実に近づけていく話を交わしています。
曲の構想が漠然としているうちに具体的な決め事をしておけば、楽団の特性が曲に反映させることが出来るからと言うわけです。
またこの時に始めて曲の具体的な構想の中身を伺いいよいよ興味が抑えきれなくなり始めてきました。

「メインとなってるのは「遮光」ではなくて「反映」のほうなんですよ。架空の光源(音程が聞き取れないクラスター状の低音)を複数箇所設定して、それを倍音で乱反射させる、っていうんですけど。明確な光ではないのは管楽器の音色の特徴かな?
 ちなみに、前半は小節感、拍節感が希薄な、いわゆる「ゲンダイオンガク」。後半は私が得意とするプレストの変拍子になりますんで。」

僕のおつむでは難解ですが、しかしワクワクさせてくれるには十分なお便りです。