|
大盛況 終了
１部
◆春の猟犬
演奏会用序曲の副題を持つこの作品はリード氏の数ある作品中最も幅広い人気を得ている曲です。題名の「春の猟犬」は１９世紀の英国詩人スウィンバーンが古代ギリシャ悲劇を現代英国語で再構成した「カリドンのアタランタ」という文学作品の中の場面で、月と狩猟の女神アルテミスを賛美する内容の詩です。曲は急―緩―急の三部形式で書かれています。１９８０年カナダはオンタリオ州のフォスター中学シンフォニックバンドを作曲者自身が指揮して初演されました。
◆イン・メモリアム
"逝ける者への哀歌"という副題から想像できるとおりリードの作品の中でも最も悲劇色の濃いとてもドラマティックな音楽です。全体は３つの部分で構成され、中間部では長調に転じ一時の良き想い出を浮かばせるような部分が登場しますが、全体的には悲劇色に貫かれた音楽となっています。イリノイ州立大学バンドの委嘱で書かれ、同大学コンサートバンドにより１９７２年に初演されました。
◆アラビアのロレンス
言うまでもなく名作中の名作たる映画のテーマ曲です。（作曲はモーリス・ジャール）１９６０年代前半期にリードはペンネームにより多くの軽音楽の編曲譜を出版しています。これらは作曲家として社会に出た際放送局やレコード会社の仕事を経た経験によるものであることは明らかです。多くの放送番組や映画、舞台の為の音楽を手がけた彼の手法はオリジナルのテーマ曲の個性を生かしつつじつに効果的な編曲を施しています。
◆幻想曲
リード氏は学校を出た後空軍に入隊し空軍軍楽隊の仕事に就きます。しかしその中で尊敬する作曲家ヴィットリオ・ジャンニーニに出会います。リードは戦後教壇に復職したジャンニーニに習うためにジュリアード音楽院に入学します。リード氏が本格的に作曲を習った唯一最大の師匠がジャンニーニ氏の作品の中からあまり演奏される機会に乏しい幻想曲を取り上げました。冒頭トランペットで示される動機が全曲を構成する吹奏楽曲としては少数派の絶対音楽の佳作です。
２部
◆カーテンアップ
吹奏楽のための舞台序曲という副題が示すとおり、ブロードウェイのミュージカルの舞台を彷彿させるようなこの作品には、前述のリード氏が若きし頃に携わった舞台や映画の仕事の経験がフルに活かされています。伝統的なミュージカル序曲の作風で開始された後は、タップダンスやラテン風。ロックンロール風の作風の音楽が聴き手を楽しませてくれます。
◆アーデンの森のロザリンド
リード氏は「オセロ」や「ハムレット」などシェークスピアの戯曲からインスパイアされた楽曲のシリーズを残しました。この作品は晩年に書かれたもので「お気に召すまま」の中で主人公のヒロインが父親を捜し求めてアーデンの森をさまよう情景を描いた楽曲です。森の風の如きクラリネットのソロに導かれてシンプルながらとてもデリケートな美しさを持った音楽となっています。
◆カリブ舞曲
カリブ海地方のトロピカルな舞曲を吹奏楽の響きで再現しようとした音楽です。弦楽器のピチカートを模したような金管楽器の音型の上でのんびりとした情景を浮かばせるような優しい音楽が聴き手を包み込んでくれます。
◆アルメニアン・ダンス パート２〜第３楽章「ロリ地方の農耕歌」
出版の事情でパート１と２に分かれはしたものの、この曲は本来全曲の中で第４楽章に相当するものです。１９７５年に完成し、ハリー・ベギアン指揮のイリノイ州立大学シンフォニック・バンドにより初演されました。曲はアルメニア民謡の採集で知られるゴミダス・ヴァルタヘッドによるアルメニア民謡集の中から選ばれた素材によって作曲されています。この「ロリ地方の農耕歌」はとても古い起源を持つもので、農耕作業の中から自然に生まれ出たものらしく、エキサイティングな中にも土の臭いがしてきそうな雰囲気を醸し出しています。
（曲解説：烏山）
（曲解説：烏山）
| 
